「介護施設で働く理学療法士の一日って、病院とどう違うの?」「残業はどれくらいあるの?」と気になる方は多いはずです。本記事では、特別養護老人ホーム・老健・デイサービスなど介護領域で働くPTの一日の流れを、時間帯ごとに数値とともに徹底解説します。病院勤務との違い、リアルな現場の声、よくある質問まで網羅しているので、転職検討中の方もキャリアを考え直したい方も、読み終えるころには「自分に合う働き方」がはっきり見えるはずです。
- 介護施設PTの平均勤務時間は8.5時間/日、1日の単位数はおおよそ16〜20単位
- 病院と比べてリハビリ密度はやや低めだが、生活全体に関わる業務が多い
- 施設形態(特養・老健・デイ・訪問)で一日の流れは大きく変わる
- 残業は月平均5〜10時間程度で、病院(15〜25時間)と比べて少ない傾向
理学療法士(介護)の一日の流れ:結論
介護分野で働く理学療法士の一日は、ひとことで言えば「リハビリ業務6割+多職種連携・記録3割+会議・委員会1割」で構成されています。病院のように1日中リハビリ室にこもるのではなく、フロアに出てケアスタッフと連携したり、生活場面の動作観察を行ったりする時間が多いのが特徴です。
厚生労働省「介護老人保健施設におけるリハビリテーション提供体制」の調査などを参考にすると、介護施設PTの典型的な一日は以下の数値で表されます。
- 始業時間:8:30〜9:00(早番・遅番ありの施設は7:30〜と11:00〜のシフト制)
- 終業時間:17:30〜18:00
- 1日の実働時間:平均8.0〜8.5時間(休憩1時間込みで9〜9.5時間拘束)
- 1日のリハビリ提供単位数:16〜20単位(1単位=20分)
- 1人あたりの介入時間:個別20分/集団40〜60分
- 1日に関わる利用者数:12〜18名
- 残業時間:月平均5〜10時間(病院は15〜25時間)
- 休憩時間:60分(昼休憩、フロア状況により分割取得もあり)
もっとも大きな違いは、病院のように「処方箋ベースで疾患別リハビリを回す」のではなく、「生活機能の維持・向上」が目的となる点です。そのため、ベッドサイド訪問・食事姿勢の評価・移乗動作のチェック・福祉用具の選定・家族指導など、リハビリ室以外で過ごす時間が4割近くを占めます。
また、介護報酬上の縛りから、1日の単位数が病院(24単位)より少なく設定されているケースが多く、結果として「1人ひとりに丁寧に向き合える」というメリットが生まれます。一方で、ケアスタッフとのカンファレンス、ケアプランの修正提案、看取り対応など、PTとしての専門性に加えて「チームの一員として動く力」が強く求められます。
- 介護施設PTの実働は8〜8.5時間/日、単位数は16〜20
- リハビリ室外での生活支援が業務の4割
- 病院より残業は少ないが、多職種連携の比重が大きい
一日の流れの詳細データ・内訳
ここでは、もっとも一般的な介護老人保健施設(老健)に勤務する常勤PTを例に、出勤から退勤までを時系列で解説します。特養・デイ・訪問リハ別の違いは後述の比較表で示します。
8:30〜9:00|出勤・申し送り
出勤後はまずユニフォームに着替え、ナースステーションで夜勤明けの看護師から申し送りを受けます。確認するのは「夜間転倒の有無」「体調変化」「新規入所者の情報」「本日のリハビリ予定変更」など。介護現場では夜間の状況がリハビリ計画に直結するため、ここで5〜10分しっかり共有します。
その後、リハビリ室に戻ってPT・OT・ST合同のショートミーティング(10〜15分)を実施。担当患者の優先順位付け、機器の使用状況、新規評価のスケジュール調整などを行います。
9:00〜12:00|午前のリハビリ介入(約8〜10単位)
午前は集中的に個別リハビリを行うコアタイムです。1コマ20分(1単位)で、9:00/9:20/9:40……と区切って予約を入れていきます。
- 9:00〜9:20:脳血管疾患後遺症のAさん、立位バランス訓練
- 9:20〜9:40:大腿骨頸部骨折術後のBさん、平行棒内歩行
- 9:40〜10:00:認知症のCさん、起立着座反復+下肢筋力訓練
- 10:00〜10:20:誤嚥性肺炎後のDさん、呼吸リハ+座位耐久性向上
- 10:20〜10:40:パーキンソン病のEさん、リズム歩行訓練
- 10:40〜11:00:新規入所者の初期評価(ROM・MMT・FIM測定)
- 11:00〜11:20:集団体操(10名前後、椅子座位での体操をリード)
- 11:20〜12:00:フロア訪問、移乗動作のフォーム指導をケアワーカーへ
病院と異なり、午前中だけで「個別5名+集団1グループ+フロア指導」と幅広く動くのが介護施設の特徴です。
12:00〜13:00|昼休憩・食事観察
休憩は60分ですが、嚥下評価や食事姿勢のチェックが必要な日は、最初の15〜20分を食堂での観察に充てることがあります。リクライニング車椅子のティルト角度、テーブル高さ、自助具の選定など、食事場面でしか得られない情報は非常に多いため、PTにとって貴重な評価機会です。観察を終えたら控室で昼食を取り、午後に備えます。
13:00〜15:30|午後のリハビリ+カンファレンス
午後はリハビリ介入を6〜8単位こなしつつ、週に2〜3回のカンファレンスが入ります。
- 13:00〜14:00:個別リハビリ3単位
- 14:00〜14:45:サービス担当者会議(ケアマネ・看護師・介護職・家族と同席)
- 14:45〜15:30:個別リハビリ2〜3単位+家族同席指導
カンファレンスではリハビリ目標の進捗、退所時期の見立て、自宅環境調整の提案などをPTの立場から発言します。発言の根拠となるのが、午前中に取った評価データやADL観察記録です。
15:30〜16:30|記録・カルテ入力
リハビリ介入が一段落する15:30以降は、電子カルテへの記録、リハビリ実施計画書の更新、加算算定のためのモニタリング記録などを進めます。介護報酬では「リハビリテーションマネジメント加算」「短期集中リハビリテーション実施加算」などの算定要件が細かいため、書類作業はおおよそ1日1.5〜2時間が目安です。
16:30〜17:30|環境調整・委員会・申し送り
夕方は、ベッド周辺の福祉用具調整、車椅子のフィッティング、翌日の予約調整、ケアスタッフへの申し送り、転倒予防委員会・褥瘡対策委員会・感染対策委員会などへの参加で締めくくります。委員会は月1〜2回程度の参加が一般的です。
17:30〜18:00|退勤
記録が終われば定時退勤が可能です。月末月初の計画書更新時期や、新規入所が重なる週は18:30〜19:00までずれ込むこともありますが、夜遅くまで残業する文化は少ない傾向です。
- 午前=個別+集団+フロア指導でフル稼働
- 昼=食事観察も大切な評価時間
- 午後=リハ+カンファレンス+記録の三本柱
- 夕方=環境調整・委員会で1日を締める
他職種・他施設との比較
「介護PT」と一言でくくっても、施設形態によって一日の流れは大きく異なります。ここでは代表的な5つの働き方を、比較表で整理します。
| 項目 | 老健(常勤PT) | 特養 | デイサービス | 訪問リハ | 急性期病院 |
|---|---|---|---|---|---|
| 始業 | 8:30 | 8:45 | 8:30 | 8:30 | 8:30 |
| 終業 | 17:30 | 17:45 | 17:30 | 17:30 | 17:30 |
| 1日の単位数 | 16〜20 | 4〜8(機能訓練) | 10〜14 | 4〜6件訪問 | 20〜24 |
| 個別介入時間 | 20分 | 20分 | 20〜40分 | 40〜60分 | 20〜40分 |
| 集団リハ有無 | あり | あり(必須) | あり(メイン) | なし | 少ない |
| 多職種連携の頻度 | 毎日 | 毎日 | 週数回 | 月1〜2回 | 毎日 |
| 記録時間 | 1.5〜2時間 | 1時間 | 1時間 | 2〜3時間 | 1.5〜2時間 |
| 残業時間/月 | 5〜10時間 | 3〜5時間 | 5〜8時間 | 10〜15時間 | 15〜25時間 |
| 夜勤・オンコール | なし | なし | なし | 原則なし | 少数あり |
老健と特養の違い
老健は「在宅復帰」が目的のため、PTのリハビリ密度が高く、退所支援の比重も大きくなります。一方、特養は終のすみかとしての性格が強く、PTは「機能訓練指導員」として配置されるケースが多く、ADL維持・拘縮予防・褥瘡予防が中心。1日の単位数は老健より少なく、フロア巡回や個別の生活動作支援に時間を割きます。
デイサービスと訪問リハの違い
デイサービスは集団体操を軸に、個別機能訓練を組み合わせる流れ。送迎業務に同行する施設もあり、その場合は8:00出勤〜18:00退勤と少し長めです。訪問リハは1件40〜60分の介入を1日4〜6件こなし、移動時間と記録時間が長くなる傾向。直行直帰が認められる事業所もあり、自由度の高さが魅力です。
急性期病院との違い
急性期病院は1日24単位フルで回す施設も多く、リハビリ密度・症例の重症度ともに高めです。介護施設は単位数が少ない代わりに、生活全般に関わる時間が長く、利用者との関係性も長期に築けます。「とにかく症例を見たい」なら病院、「生活に寄り添いたい」なら介護領域が向いています。
- 密度を求めるなら病院、関係性を求めるなら介護
- 残業最少は特養、自由度最高は訪問リハ
- 集団リハ運営力を磨きたいならデイ

現場の声・実例
実際に介護領域で働くPTの声を、年代・施設別に紹介します。一日の流れの「数字」だけでは見えてこないリアルな働き方が伝わるはずです。
20代女性・老健勤務(経験4年)
「新卒で急性期病院に入りましたが、回転が速くて利用者さんと深く関われない物足りなさがあり、3年目で老健に転職しました。今は朝9時から個別リハをこなしつつ、午後にカンファや家族指導が入ります。記録は16時くらいから始めて17:30には退勤できる日がほとんど。残業は月7時間程度で、プライベートも安定しました。退所後の生活まで見越した目標設定ができるのが、何より楽しいです」
30代男性・特養勤務(経験8年)
「特養では機能訓練指導員として配置されているので、1日の単位数は少なめ。その代わり、フロアを回って車椅子の調整や褥瘡予防のポジショニング指導をしたり、看取り期の利用者さんのご家族と話したりする時間が長いです。残業は月3時間程度。病院時代の月25時間と比べると別世界です。給料はやや下がりましたが、ワークライフバランスは段違いに良くなりました」
40代女性・訪問リハ勤務(経験15年)
「ステーション所属で、午前中に2件・午後に3件の訪問をこなしています。1日の流れは『9時に1件目→移動→10時半に2件目→昼休み→13時から3件→17時帰社→記録』というリズム。記録に時間がかかるのが悩みですが、利用者さんの自宅環境を見ながらリハビリできる面白さは病院にはありません。月1回のサービス担当者会議も貴重な学びの場です」
50代男性・デイサービス勤務(経験25年)
「定年前のセカンドキャリアとしてデイに移りました。朝の集団体操をリードして、午後は個別機能訓練を10名程度。送迎は他スタッフが担当してくれるので、リハビリに専念できます。残業は月5時間以下。ベテランPTが地域に貢献する場として、デイサービスはもっと評価されてよいと感じます」
- 残業の少なさと利用者との関係性が共通の魅力
- 給与は病院より低いが、生活満足度は高い
- セカンドキャリアの選択肢としても有力
アクション・次の一歩
ここまで読んで「自分も介護領域で働いてみたい」「今より自分に合う施設を探したい」と思った方に向けて、次に取るべき行動を整理します。
本記事のデータ・比較表で この記事のテーマ の輪郭を把握する。
勤務地・経験年数・希望年収を整理し、当てはまる選択肢を絞り込む。
介護専門の転職エージェントなど、現場情報を持つ専門家に相談すれば判断精度が上がる。
1. 1日の流れを軸に施設見学する
求人票だけでは「実際の一日」は見えません。気になる施設には必ず見学を申し込み、午前・午後・夕方の3つの時間帯のうち2つは見せてもらうと、業務密度や雰囲気を把握できます。可能なら昼休憩のタイミングで現役PTと話す機会を作ってもらいましょう。
2. リハビリ職特化の転職エージェントに登録する
PT/OT/ST向けの転職サービスを使うと、施設形態別の単位数や残業時間など、求人票に書かれない内部情報を教えてもらえます。最低でも2〜3社に登録し、提示される求人を比較することで、相場感が掴めます。
3. 認定資格でキャリアの幅を広げる
介護領域で評価されやすい資格として「認定理学療法士(介護予防/地域理学療法)」「3学会合同呼吸療法認定士」「福祉住環境コーディネーター2級」などが挙げられます。一日の流れの中で活きる場面が多く、転職時の評価アップにも直結します。
4. 一度、訪問リハ・通所リハの体験勤務を経験する
介護領域は施設形態で働き方が大きく異なります。常勤転職の前に、単発・短期のスポット勤務や見学受け入れ制度を活用し、訪問・通所・入所をそれぞれ1日体験してみると、ミスマッチを防げます。
- 気になる施設は必ず見学+現役PTヒアリング
- 転職サービスは2〜3社で比較する
- 認定資格でキャリアの選択肢を広げる
よくある質問
Q. 介護施設の理学療法士は、病院よりも本当に残業が少ないのですか?
A. はい、おおむね事実です。病院(特に急性期)のPT平均残業は月15〜25時間ですが、介護老人保健施設や特別養護老人ホームでは月3〜10時間程度に収まる施設が多く、書類業務の集中する月末でも18:30までに退勤できるケースが大半です。ただし、新規入所が立て込む時期や計画書更新月は一時的に増えるため、見学時に「繁忙期の残業」を必ず確認しましょう。
Q. 1日の単位数(リハビリ提供数)はどのくらいが標準ですか?
A. 老健の常勤PTで16〜20単位/日、デイサービスで10〜14単位/日、特養(機能訓練指導員)で4〜8単位/日が目安です。病院(急性期)の20〜24単位と比べると少なめで、その分1人あたりに丁寧に向き合える時間が確保されます。施設の体制によっては集団リハや環境調整が単位数にカウントされない場合もあるため、勤務時間と単位数のバランスを必ず確認してください。
Q. 介護領域のPTは、リハビリ以外にどのような業務がありますか?
A. ケアカンファレンスへの参加、リハビリ実施計画書・モニタリング記録の作成、家族指導、福祉用具の選定とフィッティング、転倒予防委員会・褥瘡対策委員会・感染対策委員会などへの参加、ケアスタッフへの介助技術指導などがあります。リハビリ室外の業務が1日の3〜4割を占めるのが、病院との大きな違いです。
Q. 介護施設で働くPTにオンコールや夜勤はありますか?
A. 原則ありません。リハビリ職は日勤帯のみの勤務が基本で、夜間は看護師・介護士が対応します。訪問リハの一部事業所では、緊急訪問の連絡当番が回ってくるケースもありますが、頻度は少なく月数回程度です。生活リズムを安定させたい方には、介護領域は非常に働きやすい環境といえます。
Q. 介護施設のPTから病院に戻ることはできますか?
A. もちろん可能です。ただし、急性期病院は最新の評価ツールや治療技術が日進月歩で進化しているため、介護領域に長くいるとブランクを感じる場面はあります。将来的に病院復帰を考えるなら、認定理学療法士の取得や学会発表、外部研修への定期参加で臨床力を維持しておくと、転職時の評価が下がりにくくなります。
Q. 一日の流れの中で、もっとも負担を感じるポイントはどこですか?
A. 多くの介護PTが挙げるのが「記録・書類業務の多さ」です。リハビリ実施記録、計画書、加算要件のモニタリング、カンファレンス記録など、紙・電子合わせて1日1.5〜2時間を要します。電子カルテの音声入力機能やテンプレート活用で短縮できるため、ICT化が進んでいる施設を選ぶと負担を大きく減らせます。
Q. 介護領域で活躍するために、新人PTが最初に身につけるべきスキルは何ですか?
A. (1) 移乗・起居動作の介助技術、(2) 車椅子・福祉用具の選定知識、(3) 認知症の方とのコミュニケーション技法、(4) 多職種カンファレンスでの発信力、(5) リハビリ実施計画書の作成スキルの5つが特に重要です。これらは一日の流れの中で繰り返し使うため、入職後3か月で基礎を固められると業務がぐっと楽になります。
