介護老人保健施設(老健)の一日の流れは、在宅復帰を目指すリハビリ中心の構成が最大の特徴です。早朝の起床介助から始まり、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士による個別リハ、医師の回診、夜間の見守りまで24時間体制で多職種が連携します。ここでは老健ならではのタイムスケジュールを早番・日勤・夜勤別に整理し、特別養護老人ホームや有料老人ホームとの違い、職種別の動き、現場のリアルな声まで具体的にまとめます。
- 老健の一日はリハビリ提供を軸に多職種が3〜4交代で動く構造
- 利用者の介護度平均は要介護3前後、入所期間は原則3〜6ヶ月
- 在宅復帰率の評価で運営区分が変わる「中間施設」型が他と異なる
介護老人保健施設の一日の流れ:結論
介護老人保健施設の一日は、特養や有料老人ホームと違い「在宅復帰を目指すリハビリ提供」を業務の中心軸に据えて組み立てられています。介護報酬上も在宅復帰率・ベッド回転率・リハビリ提供量で加算が変動するため、現場のタイムテーブルもリハ時間を確保することを前提に設計されているのが大きな特徴です。
具体的には、早番(7:00〜15:30)が起床・朝食・午前のリハビリ送り出しを担い、日勤(9:00〜18:00)が入浴介助・午後の集団リハ・カンファレンスを回し、遅番(11:00〜20:00)が夕食・就寝介助・記録を引き継ぎ、夜勤(17:00〜翌10:00または16:30〜翌9:30)が巡回・排泄介助・ナースコール対応に専念します。
利用者100名規模の老健では、日中帯に介護職員10〜15名・看護師3〜4名・PT/OT/ST合わせて5〜8名が稼働し、夜間は介護2〜3名+看護師1名の配置が一般的です。1人あたりのリハビリ提供量は週3回×20分が短期集中リハの最低ライン、入所3ヶ月以内の利用者には1日40分相当を目安にスケジュールが組まれます。
厚生労働省の介護給付費分科会資料によれば、在宅強化型老健の在宅復帰率は平均60%超、基本型でも約50%が3〜6ヶ月以内に自宅・サービス付き高齢者向け住宅などへ退所しています。一日の流れの中に「家族面会」「退所前訪問指導」「在宅サービス担当者会議」が組み込まれているのも、同じ入居系である特養との大きな違いです。
一日の流れの詳細データ・内訳
老健の一日を時系列で具体的に追います。下記は基本型100床、従来型多床室と個室が混在する標準的な施設をモデルにしたタイムテーブルです。
| 時間 | 主な業務 | 主担当職種 |
|---|---|---|
| 6:00 | 早番出勤、夜勤からの申し送り、巡回 | 介護・看護 |
| 6:30 | 起床介助、洗面、整容、トイレ誘導 | 介護 |
| 7:30 | 朝食配膳、食事介助、服薬、口腔ケア | 介護・看護 |
| 9:00 | 日勤出勤、医師回診、午前リハ開始 | 全職種 |
| 9:30 | 入浴介助開始(一般浴・中間浴・機械浴) | 介護・看護 |
| 11:30 | 昼食準備、嚥下確認 | 介護・看護・ST |
| 12:00 | 昼食、食事介助、服薬 | 介護・看護 |
| 13:00 | 口腔ケア、午睡誘導、職員休憩 | 介護 |
| 14:00 | 午後の個別リハ・集団リハ | PT・OT・ST |
| 15:00 | おやつ、水分補給、レクリエーション | 介護 |
| 16:00 | 多職種カンファレンス、ケア計画見直し | 全職種 |
| 17:00 | 遅番中心へ業務移行、夕食準備 | 介護・看護 |
| 18:00 | 夕食、食事介助、服薬 | 介護・看護 |
| 19:00 | 就寝準備、口腔ケア、整容 | 介護 |
| 20:00 | 消灯前巡回、夜勤申し送り | 介護・看護 |
| 21:00 | 消灯、夜間体制へ | 夜勤 |
| 22:00 | 1回目の定時巡回、排泄介助 | 夜勤 |
| 0:00 | 2回目巡回、体位変換 | 夜勤 |
| 2:00 | 3回目巡回、おむつ交換 | 夜勤 |
| 5:00 | 4回目巡回、起床準備の予兆確認 | 夜勤 |
特に午前9時〜11時はリハビリと入浴が並行する「老健で一番忙しい2時間」と呼ばれる時間帯です。介護職員はリハ室への送迎、入浴介助、トイレ誘導を同時並行でこなすため、1〜2分単位で動線を組まないと業務が回りません。
リハビリは個別20〜40分を午前2〜3コマ、午後3〜4コマで提供します。短期集中リハ加算の対象者は入所3ヶ月以内、毎日40分以上が必要となるため、PT・OT・STのスケジュール表は前日中に調整され、当日朝に介護職員へ送迎時刻が共有されます。
夜勤帯は仮眠2時間が労基法上推奨されますが、ナースコールが集中する22時台と4時台は仮眠が取れないことも多く、夜勤明けの当日は完全休と扱う施設が増えています。記録業務はインカム+タブレット入力(ほのぼのNEXT、ワイズマンなどの介護記録システム)が普及し、移動時間を含めて1日30〜60分が目安です。
- 9〜11時はリハビリと入浴が並行する最繁忙帯で動線設計が命
- 短期集中リハ対象者は入所3ヶ月以内、毎日40分以上が必須
- 夜勤帯は2時間仮眠+4回巡回が標準、明け日は完全休が主流
他の施設タイプとの比較
老健の一日の流れは、他の入居系・通所系サービスと比較すると「医療とリハの濃さ」「在宅復帰を前提とした退所調整」「医師常駐」の3点で明確に区別できます。
| 施設タイプ | 主目的 | 平均入所期間 | 医師配置 | 夜勤 | リハ提供量 |
|---|---|---|---|---|---|
| 介護老人保健施設(老健) | 在宅復帰・リハ | 3〜6ヶ月 | 常勤1名以上 | あり(2〜3名) | 多い(個別+集団) |
| 特別養護老人ホーム(特養) | 終の棲家・生活 | 平均約4年 | 非常勤・嘱託 | あり(2名) | 機能訓練指導員のみ |
| 介護付き有料老人ホーム | 生活+介護 | 任意・長期 | 嘱託訪問 | あり | 機能訓練レベル |
| 住宅型有料老人ホーム | 生活 | 任意 | 訪問医療 | 施設次第 | 外部訪問リハ |
| グループホーム | 認知症ケア | 長期 | 嘱託 | あり(1名) | 機能訓練程度 |
| デイサービス(通所介護) | 通所・日中ケア | 通所のみ | なし | なし | 個別機能訓練 |
| デイケア(通所リハ) | 通所リハビリ | 通所のみ | 常勤1名 | なし | 多い |
特養との最大の違いは「医師が日勤帯フルタイムでいる」点。バイタル異常や急変時の判断スピードが段違いで、介護職員が「主治医に確認する」という動きが日中はその場で完結します。一方の特養は嘱託医の往診時間に合わせて状態報告を整理する時間が必要で、一日のリズムが変わってきます。
有料老人ホームとの違いは「自由時間の少なさ」です。老健の利用者はリハビリ・入浴・カンファレンスが日課として組まれているため、自室でのんびり過ごす時間は午後1〜2時間程度しか確保されません。有料は生活の場のため日中の予定は本人選択が中心になり、外出・外食・趣味活動が一日の中に組み込みやすい構造です。
デイケア(通所リハ)と日中の内容は近いものの、夜勤の有無が大きく違うため、職員の勤務シフトと利用者の連続観察体制がまったく異なります。デイケアは送迎到着から帰宅送迎までの6〜7時間が勝負で、その間に入浴・食事・リハをコンパクトに詰める設計です。

介護老人保健施設での主要職種別の見え方
老健の一日は職種ごとに見える景色がまったく異なります。それぞれの動き方を整理します。
介護福祉士・介護職員
早番・日勤・遅番・夜勤の4交代が基本。1日の業務時間の約4割が直接介助、3割が記録と申し送り、残り3割がリハ送迎と環境整備です。老健では「リハ室まで連れて行く」「リハ後の状態をPTに引き継ぐ」役割が特養より多く、多職種連携の中継役を担います。
看護師・准看護師
日勤2〜3名、夜勤1名体制が標準。インスリン注射、褥瘡処置、吸引、経管栄養、点滴管理、医師指示の実施が中心です。老健は医療依存度が中〜高の利用者が多いため、特養や有料より医療行為の頻度が高く、急性期病院出身のナースが慢性期管理にスキルを横展開しやすい環境です。
理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)
リハ職は1日6〜8コマの個別リハ+集団体操を回します。PTは歩行・移乗訓練、OTは食事・更衣などADL訓練、STは嚥下評価と言語訓練を担当。退所前訪問指導で利用者の自宅を訪問し、住宅改修や福祉用具の提案を行うのも老健リハ職の特徴です。
介護支援専門員(ケアマネジャー)
施設ケアマネは入所・退所調整が日々の中心業務。在宅復帰率の評価指標があるため、入所時から退所先(自宅・サ高住・特養待機)を逆算してケアプランを設計します。家族・居宅ケアマネ・地域包括支援センターとの会議参加も多めです。
医師・支援相談員
医師は常勤1名以上の配置義務があり、午前回診、処方、家族面談、サービス担当者会議への出席を担当。バイタル異常や急変時はその場で指示を出せるため、現場の安心感が大きいです。支援相談員は入所相談、家族対応、市町村との手続き、退所先の確保など窓口業務全般を担当します。
現場の声・実例
実際に老健で働く職員に聞いた一日の感じ方をまとめます(人物像は複数施設の取材を匿名化・複合化しています)。
30代女性・介護福祉士・経験8年
「特養から老健に転職して一番変わったのは、リハ職と毎日話す機会が増えたこと。朝のリハ送りで『今日は◯◯さん歩行調子良いです』と申し送るだけで、PTが個別メニューを微調整してくれる。利用者の歩く距離が伸びていくのが数字で見えるので、やりがいが特養と違う種類で大きい」
50代男性・看護師・経験20年
「医師が常駐しているので、夜勤明けに『◯◯さんSpO2が90を切りました』と報告したらその場で胸部X線オーダーが出る。病院ほどではないが、特養の嘱託医待ちのもどかしさがないので判断が早い。医療処置の頻度は病棟より少ないが、慢性期管理の知識が一番活きる場」
20代男性・理学療法士・経験4年
「病院実習で学んだ歩行訓練を、6ヶ月という期間の中で結果を出すフィールド。退所前訪問で自宅の段差を見て、玄関に手すり1本提案するだけで在宅復帰できるケースもある。介護職員さんとの連携が成果に直結する仕事です」
40代女性・施設ケアマネ・経験12年
「入所した日から退所日を逆算するのが老健ケアマネの仕事。家族の不安、居宅ケアマネとの連携、地域包括との情報共有を一日3〜4本の電話でこなす。在宅復帰率の数字に追われる側面はあるが、利用者が自宅に戻った後に『デイで頑張ってます』と聞けるのが何より」
60代女性・介護助手(無資格パート)・経験2年
「シーツ交換、配膳、見守り中心。リハ室の掃除や衣類整理も担当。資格は無いが利用者の名前と顔が一致する頃にはチームの一員。介護職員さんが直接介助に集中できるよう裏方を回すのが楽しい」
- 介護職員はリハ職との連携が日常で、機能改善が数字で見える
- 看護師は医師常駐により判断スピードが速く慢性期管理が活きる
- リハ職は退所前訪問で在宅復帰の最後の一押しを担う
次のアクション
老健の一日の流れに興味を持った方は、次の3ステップで理解を深めましょう。
ここのデータ・比較表で この記事のテーマ の輪郭を把握する。
勤務地・経験年数・希望年収を整理し、当てはまる選択肢を絞り込む。
介護専門の転職エージェントなど、現場情報を持つ専門家に相談すれば判断精度が上がる。
- 見学申込:希望施設に電話または公式サイトから見学予約を入れる。9〜11時の最繁忙帯と14〜16時のリハ・レク帯の両方を見ると施設の雰囲気が掴めます。
- 体験勤務・1日同行:介護職・リハ職とも1日同行体験を受け入れている施設が増えています。早番1日のみ・日勤1日のみのスポット体験が応募前の判断材料になります。
- 求人比較:求人票では「日勤帯のリハ職人数」「夜勤回数」「在宅復帰率」「短期集中リハ加算の取得有無」を必ずチェック。これらが老健の一日の濃度を決める指標です。
求人サイトを見る際は、施設タイプを「介護老人保健施設」に絞り込み、エリア・夜勤回数・年収帯で比較するのが効率的です。利用検討中のご家族は、入所申込書と並行してケアマネジャー経由で空床状況を確認すると話が早く進みます。
よくある質問
Q. 老健と特養の一日の違いは何ですか?
A. 老健は午前と午後にリハビリ時間が組み込まれ、医師回診・カンファレンスが日々入ります。特養は生活リズム重視で、機能訓練指導員による個別訓練はありますが頻度・時間ともに少なめ。医師は嘱託で訪問日のみのことが多く、急変時の判断スピードが異なります。
Q. 老健の夜勤帯は何人体制が一般的ですか?
A. 100床規模で介護職員2〜3名+看護師1名が標準です。仮眠時間2時間、巡回4回(22時・0時・2時・5時)が基本。看護師夜勤は医療依存度の高い利用者がいる施設では必須で、特養より配置率が高い傾向があります。
Q. リハビリは1日何分くらい受けられますか?
A. 入所3ヶ月以内の短期集中リハ対象者は1日40分以上が標準。それ以降は週3回×20分が目安です。集団体操は1日1〜2回、各15〜30分が組まれており、PT・OT・STが分担して提供します。
Q. 入浴は週に何回ですか?
A. 老健の入浴は週2回以上が運営基準で、多くの施設は週2回(火金、水土など)を一般浴・中間浴・機械浴に振り分けて実施します。リハ目的で歩行入浴を選択するケースもあります。
Q. 入所期間に上限はありますか?
A. 原則3〜6ヶ月で、在宅復帰または他施設への退所が前提です。ただし在宅復帰が難しい場合は入所継続も可能で、平均入所期間が10〜12ヶ月になっている施設も少なくありません。
Q. 休憩時間はちゃんと取れますか?
A. 8時間勤務で60分の休憩が労基法上の義務です。日勤帯は12時台と15時台に分けて取得する施設が多く、夜勤は仮眠2時間+休憩30〜60分が一般的です。リハと入浴が重なる9〜11時は休憩を取りにくいため、シフト編成の工夫が施設ごとに異なります。
Q. 夜勤の頻度はどのくらいですか?
A. 月4〜5回が標準です。2交代制施設では月4回、3交代制施設では月7〜8回程度が一般的。夜勤明けの翌日は公休扱いとする施設が増えています。
