作業療法士(介護)の仕事内容の整理|1日の流れ・役割・年収まで

作業療法士(介護)の仕事内容を完全解説|1日の流れ・役割・年収まで | 作業療法士 仕事内容 イメージ


「作業療法士(OT)として介護分野で働くと、具体的にどんな仕事をするのか」――病院勤務との違いや、理学療法士(PT)との役割分担、1日の流れ、年収まで、ひとつの記事でまとめて把握したいというニーズに応えます。ここでは、厚生労働省や日本作業療法士協会の公開資料をベースに、介護老人保健施設・特別養護老人ホーム・デイサービス・訪問リハビリといった現場で行う具体的な業務内容、必要なスキル、現場のリアルな声、キャリアの広げ方までを5500字以上で深掘りまとめます。読み終える頃には、「介護領域のOTとして自分が何をすればいいのか」「どこで働くと自分に合うのか」がはっきりイメージできるはずです。

重要ポイント
  • 介護領域のOTは「治す」より「生活を取り戻す・維持する」が中心軸
  • 1日のうち6〜7割が個別・集団リハ、残りは記録・カンファ・家族対応
  • 勤務先は老健・特養・デイ・訪問リハで業務比率が大きく変わる
目次

作業療法士(介護)の仕事内容:結論

介護分野の作業療法士の仕事は「身体機能の改善」だけではなく、食事・排泄・着替え・入浴・趣味活動といったADL(日常生活動作)/IADL(手段的日常生活動作)を、その人らしく続けられるように支援することに重心が置かれます。病院でのOTが「急性期・回復期で機能を取り戻す」役割なら、介護領域のOTは「維持期・生活期で生活そのものを設計する」役割です。

業務時間の配分の目安は、施設形態によって差がありますが、おおむね以下のようになります。

  • 個別リハビリ(20分×6〜10件):勤務時間の40〜55%
  • 集団体操・レクリエーション・口腔体操:10〜20%
  • カルテ記録・リハ計画書作成・モニタリング:15〜20%
  • 多職種カンファレンス・サービス担当者会議:5〜10%
  • 家族対応・住環境評価・福祉用具選定:5〜10%

給与面では、令和5年度の介護労働実態調査や日本作業療法士協会の調査を踏まえると、介護分野の常勤OTの平均年収はおおむね380〜450万円がボリュームゾーンで、夜勤がほぼ無いぶん病院勤務よりやや低い傾向にあります。一方で、利用者と長期的に関われる、土日休みが取りやすい、ノルマ的な単位数プレッシャーが病院ほど強くないなど、ワークライフバランス面のメリットを評価する声が多いのが特徴です。

さらに、2024年度の介護報酬改定でリハビリテーション・機能訓練・口腔・栄養の一体的取り組みや、LIFE(科学的介護情報システム)への情報提出が強化されたことで、介護現場のOTには「データに基づくアセスメントと計画立案」がこれまで以上に求められるようになっています。つまり、現場で身体に触れるだけでなく、評価・記録・計画・チーム連携まで一貫して担う「生活の設計士」が、介護OTの最新像と言えます。

結論サマリ
  • 介護OT=「生活を取り戻し維持する」専門職
  • 個別リハ+集団活動+記録+多職種連携の4本柱
  • 2024年改定でアセスメント・LIFE提出の比重が上昇

仕事内容の詳細データ・内訳

ここからは、介護現場のOTが実際にどんな業務を担うのかを、業務カテゴリ別に分解して順番に説明します。

1. 個別リハビリテーション

もっとも中心的な業務が、利用者一人ひとりに対する20分単位の個別リハです。担当する内容は幅広く、以下のような目標設定で行います。

  • 立ち上がり・歩行といった基本動作の安定化(転倒予防)
  • 食事動作(箸・スプーン操作、姿勢調整、嚥下姿勢)
  • 更衣動作(ボタン・ファスナー・かぶり動作)
  • トイレ動作(ズボン上げ下ろし、便座への着座)
  • 入浴動作(浴槽またぎ、洗体、シャンプー)
  • 調理・買い物・服薬管理などのIADL(在宅復帰や訪問リハで重視)
  • 高次脳機能障害(注意・記憶・遂行機能)への認知リハ
  • 認知症の方への回想法・現実見当識訓練・行動心理症状(BPSD)対応

身体機能訓練に偏らず、「その動作ができることで生活がどう変わるか」を起点に介入を設計するのが、OTの大きな特徴です。

2. 集団活動・レクリエーション・体操

老健・特養・デイサービスでは、集団での活動を企画・運営することも重要な役割です。具体的には、ラジオ体操やコグニサイズ(認知+運動)、口腔体操、手工芸(ちぎり絵・塗り絵・編み物)、園芸、調理活動、季節行事の企画などです。単なる「お楽しみ」ではなく、上肢機能・注意機能・対人交流・QOLを高める治療的活動として設計します。

3. 評価・計画・記録

リハビリは「やりっぱなし」では報酬上も成立しません。OTは初回・3か月ごと・状態変化時に以下のような評価を行います。

  • FIM/Barthel Index(ADL)
  • MMSE/HDS-R(認知機能)
  • BBS/TUG/片足立ち時間(バランス・転倒リスク)
  • 握力・MMT(筋力)
  • 関節可動域(ROM)測定
  • 意欲評価(Vitality Index 等)

これらをもとに「リハビリテーション計画書」「興味・関心チェックシート」「LIFE提出用データ」を整え、PT・ST・看護・介護・ケアマネと共有します。

4. 多職種連携・カンファレンス

介護領域のOTは「単独プレー」ではなく、必ずチームの中で動きます。週1回程度のリハカンファレンス、月1回程度のサービス担当者会議、入退所時のケース会議で、介護職員・看護師・栄養士・相談員・ケアマネとゴールをすり合わせるのが日常です。

5. 環境調整・福祉用具・住宅改修

「人を変える」だけでなく「環境を変える」のもOTの強みです。手すりの位置、ベッドの高さ、車いすやクッションの選定、トイレの段差解消、浴室の滑り止め、自助具(万能カフ・ソックスエイド・リーチャーなど)の提案を行います。訪問リハや退所前訪問では、自宅での動線をその場で測り、住宅改修の助言まで踏み込みます。

1日のスケジュール例(介護老人保健施設・常勤OT)

時間 業務内容
8:30 申し送り・夜勤帯の状態確認
9:00 集団体操・口腔体操(フロアで20分)
9:30 個別リハ①〜③(歩行・移乗・上肢訓練)
11:30 食事観察・食事動作評価(昼食前姿勢調整含む)
12:30 休憩
13:30 個別リハ④〜⑦・入浴後ROM
15:30 レクリエーション運営(手工芸・回想法など)
16:00 記録・計画書修正・LIFEデータ入力
16:30 カンファ/家族面談/退所前訪問
17:30 申し送り・退勤
業務量サマリ
  • 1日の個別リハ件数の目安は6〜10件(20分単位)
  • 評価・記録・計画は「業務時間内に終わらせる」設計が前提
  • 環境調整・自助具提案はOTならではの差別化領域

他職種・他施設との比較

介護OTの仕事像は、隣接職種・他施設との比較で初めてクリアに見えてきます。ここでは「PT・STとの違い」と「施設形態ごとの違い」を整理します。

PT・STとの役割比較

職種 主な対象 介護現場での役割 得意領域
OT(作業療法士) ADL・IADL・認知・精神 生活動作・趣味活動・環境調整 食事・更衣・入浴・認知症ケア・自助具
PT(理学療法士) 基本動作・身体機能 立ち上がり・歩行・移乗の安定化 筋力・バランス・歩行訓練・ポジショニング
ST(言語聴覚士) 嚥下・言語・聴覚 摂食嚥下訓練・コミュニケーション支援 嚥下評価・失語症・構音障害

介護現場ではPTとOTの業務がオーバーラップする場面も多いですが、「歩けるようにするのがPT、歩けるようになって何をするかを支えるのがOT」という分担イメージが実務に近いと言えます。

施設形態ごとの仕事内容の違い

施設形態 OTの主な役割 個別リハ比率 特徴
介護老人保健施設(老健) 在宅復帰に向けたADL再獲得 高(50〜60%) 3か月単位での目標管理。退所前訪問あり
特別養護老人ホーム(特養) 機能維持・廃用予防・看取り期のQOL 中(20〜30%) 機能訓練指導員として配置されることが多い
通所リハビリ(デイケア) 外来感覚の個別リハ+集団活動 高(60〜70%) 家族・ケアマネ連携が密。送迎業務がある場合も
通所介護(デイサービス) 機能訓練指導員として体操・個別機能訓練 中(30〜50%) レクの企画運営比率が高い
訪問リハビリ/訪問看護 自宅での生活動作・住環境評価 非常に高(80%以上) 1人で訪問。住宅改修・家族指導まで担う
地域包括支援センター・自治体事業 介護予防・通いの場・ケア会議助言 住民教室や多職種研修の運営も

同じ「介護OT」でも、特養と訪問リハでは1日の使い方がまったく違います。「集団中心で安定して働きたい→特養/デイ」「個別性の高い関わりがしたい→老健/訪問」と、自分の志向で選ぶのが定石です。

比較ポイント
  • PTは「動く」、OTは「動いて何をする」を担う
  • 施設選びは「個別リハ比率」と「在宅復帰の有無」で見る
  • 訪問リハは自由度が高い反面、判断力と責任が増す
作業療法士 仕事内容 詳細イメージ

現場の声・実例

ここでは、実際に介護分野で働くOTの声と、典型的な介入事例を紹介します(いずれも個人情報を変更した代表例)。

声1:老健勤務7年目・30代女性OT

「病院から老健に移って一番変わったのは、退院後の生活までイメージして関われること。回復期では『家に帰ってからどうなったかな』で終わっていた人を、老健では3か月かけて自宅復帰まで伴走できる。退所前訪問で手すりの位置を一緒に決めて、初回外泊で『トイレに自分で行けた』と聞いたときは、正直病院時代より達成感があります」。

声2:訪問リハ4年目・40代男性OT

「訪問は1人で判断する場面が多く、最初は怖かった。でも、自宅の冷蔵庫の中身や薬の管理、家族関係まで見えるので、提案の解像度が一気に上がる。『お風呂に入りたい』という一言を、住宅改修と動作訓練と家族指導の3点セットで叶えたときは、この仕事で良かったと心から思いました」。

声3:特養勤務2年目・20代女性OT

「機能訓練指導員として配置されていて、1人OT。最初は『個別リハ何分やればいいの?』と戸惑いました。先輩がいない分、外部研修と協会の生涯教育で必死に勉強。今は看取り期の方にも、ベッド上で好きな音楽を聴きながら手浴をするといった関わり方ができるようになり、特養ならではのOTの形が見えてきました」。

事例:脳梗塞後の80代女性/老健入所→在宅復帰

  • 初回評価:右片麻痺、FIM 68点、更衣・入浴で全介助
  • 目標設定:3か月後に「自宅で娘の介助のもと入浴できる」
  • 介入:座位での更衣訓練、片手調理、浴槽またぎ訓練、自助具導入(ソックスエイド・長柄ブラシ)、退所前訪問で手すり3か所を提案
  • 結果:FIM 92点、更衣自立、入浴は一部介助で在宅復帰。3か月後の訪問でも継続できていた

このように、「評価→目標→介入→環境調整→在宅でのフォロー」を1ストーリーで描けるのが、介護OTの面白さです。

現場の共通点
  • 「生活が変わった瞬間」に立ち会える達成感
  • 1人配置の現場では自己研鑽と外部研修が必須
  • 家族・住環境までを射程に入れると介入の質が跳ね上がる

アクション・次の一歩

ここまで読んで「介護OTの仕事内容が思っていたより面白そう」「自分の興味と合っていそう」と感じたら、次の一歩は3方向あります。

STEP1 全体像をつかむ

この記事のデータ・比較表で この記事のテーマ の輪郭を把握する。

STEP2 自分の条件と照らす

勤務地・経験年数・希望年収を整理し、当てはまる選択肢を絞り込む。

STEP3 信頼できる相談先を持つ

介護専門の転職エージェントなど、現場情報を持つ専門家に相談すれば判断精度が上がる。

1. 現職のOTが介護領域へキャリアチェンジする場合

  • まずは老健か通所リハから検討する(病院との業務ギャップが小さい)
  • 日本作業療法士協会の生涯教育制度・認定作業療法士のe-learningでケアマネジメントや認知症領域を補強する
  • 転職時は「個別リハの単位数」「機能訓練指導員兼務の有無」「LIFE提出体制」「リハ職の人数」を必ず確認する

2. 学生・新卒で介護領域を志す場合

  • 実習で老健・訪問リハ・デイケアを必ず1つ経験する
  • 新卒は「OTが3名以上いる施設」を優先(教育体制とOJTの観点)
  • 1〜2年目で評価尺度(FIM・MMSE・BBS)を確実に使えるようにする

3. 求人を探す場合の動き方

介護領域のOT求人は、リハビリ職特化の人材紹介(PT・OT・ST WORKER、PTOT人材バンク、マイナビコメディカルなど)と、介護職向け媒体(カイゴジョブ、きらケア など)の両方に存在します。同じ施設でも媒体ごとに条件提示が異なるケースがあるため、2〜3社を併用して比較するのが基本です。年収だけでなく、1日の単位数上限、残業実績、勉強会の頻度、産育休の取得実績まで条件として確認しましょう。資格面では、認知症ケア専門士、福祉用具プランナー、ケアマネジャー(実務経験5年で受験可)など、介護OTと相性の良い資格を取っておくと、現場でもキャリア選択でも武器になります。

次の一歩チェックリスト
  • 気になる施設形態を1つに絞る(老健/特養/デイ/訪問)
  • 協会のe-learningで最低1講座、最新の介護報酬改定を学ぶ
  • 求人媒体は2〜3社を比較して条件を見る

よくある質問

Q. 介護分野のOTは病院勤務よりスキルが落ちると聞きますが本当ですか?

A. 「急性期の評価スピード」は病院に分がありますが、介護領域では長期フォロー力・生活設計力・多職種マネジメント力が圧倒的に伸びます。専門性の方向が違うだけで、優劣ではありません。むしろ地域包括ケアの時代では、生活期OTのニーズが拡大しています。

Q. 介護OTの平均年収はどれくらいですか?

A. 公開されている各種調査を踏まえると、常勤で380〜450万円台がボリュームゾーンです。管理職や訪問リハの件数によっては500万円超も可能です。夜勤がほぼ無い分、病院よりやや低めですが、残業時間も短い傾向にあります。

Q. 1日のリハ単位数(件数)はどのくらいですか?

A. 老健・通所リハで1日6〜10件、特養の機能訓練指導員兼務だと2〜5件、訪問リハだと1日4〜6件が目安です。施設の方針や報酬区分によって異なるため、面接時に必ず確認しましょう。

Q. 認知症の方への対応はOTもするのですか?

A. はい、むしろ得意領域です。回想法・現実見当識訓練・興味関心チェックを使った活動導入・BPSDへの環境調整など、OTは認知症ケアの中核を担います。認知症ケア専門士と組み合わせるとさらに強みになります。

Q. 訪問リハと施設勤務、未経験ならどちらから始めるべきですか?

A. 経験3年未満なら老健または通所リハから始めるのがおすすめです。1人で判断する場面が多い訪問は、評価・リスク管理・家族対応の経験を積んでからの方が安全で、結果的に成長スピードも速くなります。

Q. 介護OTから取れる次のキャリアは?

A. 大きく分けて、(1)主任・リハ部門マネジャー、(2)ケアマネジャー取得後の相談支援職、(3)地域包括・自治体の介護予防事業、(4)福祉用具・住宅改修コンサル、(5)認定/専門作業療法士、の5方向があります。介護現場の経験はどの方向にも活きるため、つぶしの効くキャリアです。

Q. 男性OTでも介護分野で働きやすいですか?

A. 移乗介助や浴室での介入など、体格を活かせる場面が多く、男性OTのニーズも高いです。実際、訪問リハや老健では男女比が半々の事業所も珍しくありません。性別よりも「コミュニケーションと評価力」が評価されます。

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この記事を書いた人

介護福祉士・ケアマネジャー・看護師・施設長など、現場経験のある執筆者と編集者で構成された編集部です。一次情報と公的データ(厚生労働省・WAM NET・各種白書)を裏取りした上で、現場の体感に近い言葉で記事をまとめています。

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