「介護施設で働く作業療法士って、実際どんな一日を過ごしているの?」――そんな疑問に答えるため、本記事では作業療法士(介護分野)の一日の流れを時間帯別・施設別に徹底解説します。デイサービス、介護老人保健施設(老健)、特別養護老人ホーム(特養)それぞれのタイムスケジュール、業務内容の内訳、医療分野のOTとの違い、現場のリアルな声、よくある質問まで網羅。これから介護分野へ転職を検討している方、新人OTの方、家族の利用先を選ぶ方にとって、施設選びとキャリア設計の判断材料になる情報をまとめました。
- 介護分野OTの一日は「申し送り→個別リハ→集団活動→記録→カンファ」が基本軸
- 1日のリハ提供単位数は平均15〜20単位(1単位=20分)が目安
- 施設形態(デイ・老健・特養)でスケジュールと業務比重が大きく変わる
- 医療OTより「生活支援」「多職種連携」「レク企画」の比重が高い
- 残業は平均月10時間以下と医療分野より少なめの施設が多い
作業療法士(介護)の一日の流れ:結論
結論から言うと、介護分野の作業療法士(OT)の一日は「8:30始業→17:30終業の日勤固定」が基本で、夜勤やオンコールはほぼありません。日中の時間配分は施設形態によって異なりますが、概ね次のような構成になります。
標準的な1日のタイムスケジュール(老健の例)
- 8:30〜8:45 出勤・申し送り(看護・介護・PT/STと情報共有)
- 8:45〜9:15 病棟ラウンド・利用者の状態確認・ベッドサイドからの離床介助
- 9:15〜12:00 個別リハビリテーション(1単位20分×6〜8件)
- 12:00〜13:00 昼休憩(食事観察・摂食評価を兼ねるケースも)
- 13:00〜15:30 個別リハ+集団リハ・レクリエーション運営
- 15:30〜16:30 カンファレンス・家屋調査・退所前訪問など
- 16:30〜17:30 記録(リハ記録・計画書作成)・翌日準備
- 17:30 終業(残業10〜30分程度の日が多い)
1日の業務内訳(時間ベース)
厚生労働省「介護報酬上のリハビリテーション提供体制」および民間の業務実態調査をもとにすると、介護分野OTの1日の業務時間は以下のように分配されます。
- 個別リハビリ提供:約4〜5時間(全体の50〜60%)
- 集団リハ・レク:約1〜1.5時間(15〜20%)
- 記録・書類作成:約1.5〜2時間(20〜25%)
- カンファ・多職種連携:約30〜60分(5〜10%)
- 環境調整・福祉用具相談:約30分(5%)
医療分野(回復期病棟など)のOTが「個別リハ7〜8時間+記録1時間」と個別介入中心なのに対し、介護分野は集団活動と多職種連携・生活環境調整の比重が大きいのが最大の特徴です。要介護高齢者の「在宅復帰」「生活機能維持」がゴールとなるため、ADL(日常生活動作)を生活場面で評価・介入する時間が長くなります。
一日の流れの詳細データ・内訳
ここでは、介護分野OTの一日を時間帯ごとに細分化し、それぞれの業務で「何をしているのか」「どんなスキルが求められるのか」を具体的に解説します。
朝(8:30〜9:15):申し送り・状態把握
出勤後の最重要業務は申し送りです。夜勤帯の介護職員から「Aさんが昨夜転倒しかけた」「Bさんは食事量が減っている」といった情報が共有され、当日のリハ計画を微修正します。OTは特に「離床」「食事姿勢」「整容動作」など生活行為に関わる情報をキャッチし、その日の介入優先度を決めます。
- 夜間の睡眠状況・転倒リスクの確認
- 体調変化(発熱・血圧・疼痛)のチェック
- 家族面会予定・退所予定の確認
- PT・STとの介入順序調整(同一利用者の重複回避)
午前(9:15〜12:00):個別リハの中核時間
午前中は利用者の集中力・体力が最も高い時間帯のため、個別リハの主戦場です。介護報酬上、介護老人保健施設のOTは1日18〜20単位(1単位=20分)程度を担当するのが一般的で、午前中だけで6〜8件をこなします。
- 上肢機能訓練(肩関節ROM・把握動作・書字練習)
- ADL訓練(更衣・整容・トイレ動作・入浴動作の実地練習)
- 高次脳機能訓練(注意・遂行機能・記憶のドリル)
- 福祉用具・自助具の適合評価と練習
- 食事姿勢・嚥下姿勢の調整(STと協働)
昼(12:00〜13:00):休憩+食事観察
制度上は休憩時間ですが、特養・老健では食事介助の様子を観察し姿勢評価を行うOTも多くいます。「ムセが多い」「右手でスプーンが使えない」など、食事場面でしか見えない課題を把握できる貴重な時間。観察自体は業務外でも、午後のリハ計画修正に直結します。
午後(13:00〜15:30):集団活動・レクリエーション運営
介護分野ならではの業務が集団リハ・レクリエーションです。デイサービスでは午後の中心業務、老健・特養では週2〜3回程度の頻度で実施されます。
- 体操・口腔体操(10〜15分の準備運動)
- 手工芸・園芸・調理活動(作業療法の本領発揮)
- 音楽療法・回想法・脳トレ
- 季節行事の企画運営(七夕・敬老会・クリスマス会等)
「何をどう楽しんでもらうか」を企画する力は、医療OTにはあまり求められないスキルです。レク準備に1日30分〜1時間使うこともあります。
夕方(15:30〜17:30):カンファ・記録・環境調整
夕方は多職種カンファレンスと記録業務のゴールデンタイム。週1〜2回はサービス担当者会議や退所前カンファに参加し、ケアマネ・医師・看護師・家族と退所後の生活を設計します。
- リハビリテーション総合実施計画書(3か月毎更新)の作成
- 日々のリハ記録(SOAP形式)入力
- 退所前訪問・家屋調査の同行(手すり位置・段差解消の提案)
- 福祉用具レンタル業者との打ち合わせ
- 午前は個別リハ中心、午後は集団活動と記録が中心
- 1日18〜20単位の個別リハに加え、レク企画・家屋調査などの周辺業務も多い
- 申し送り・カンファでの多職種連携が業務の質を左右する
他職種・他施設との比較
介護分野OTの一日の流れは、施設形態や他職種との比較でより理解が深まります。代表的な3施設と他リハ職を比較してみましょう。
施設形態別:1日のスケジュール比較
| 項目 | デイサービス | 老健(介護老人保健施設) | 特養(特別養護老人ホーム) |
|---|---|---|---|
| 勤務時間 | 8:30〜17:30 | 8:30〜17:30 | 8:30〜17:30 |
| 個別リハ単位/日 | 10〜15単位 | 18〜20単位 | 5〜10単位(機能訓練指導員として) |
| 集団活動の比重 | 非常に高い(午後の主軸) | 中程度(週2〜3回) | 高い(生活レク中心) |
| 送迎業務 | あり(朝夕30分〜1時間) | なし | なし |
| 家屋調査・退所支援 | 限定的 | 頻繁(退所前訪問必須) | 少ない(看取り中心) |
| 夜勤 | なし | なし | なし |
| 残業時間/月 | 5〜10時間 | 10〜20時間 | 5〜10時間 |
| 給与目安(月給) | 25〜30万円 | 27〜33万円 | 26〜31万円 |
他リハ職(PT・ST)との一日の違い
| 項目 | OT(作業療法士) | PT(理学療法士) | ST(言語聴覚士) |
|---|---|---|---|
| 主な介入領域 | 上肢・ADL・高次脳・精神 | 下肢・歩行・基本動作 | 嚥下・言語・コミュニケーション |
| レク企画頻度 | 高い(手工芸・調理担当) | 中(体操担当が多い) | 中(口腔体操担当) |
| 家屋調査の主導 | 多い(環境調整の専門) | 多い(動線評価) | 少ない |
| 食事場面への関与 | 姿勢・自助具担当 | 少ない | 嚥下評価・食形態担当 |
| 1日の単位数 | 15〜20単位 | 18〜22単位 | 10〜15単位 |
医療分野OTとの一日の違い
同じ作業療法士でも、医療分野(回復期リハ病棟・急性期病院)と介護分野では一日の過ごし方が大きく異なります。医療OTは「単位数ノルマ」(21単位/日)が厳しく、休憩を削って個別リハに専念するケースが目立ちます。一方介護OTは個別リハ単位数こそ少ないものの、集団活動・記録・連携業務が幅広く、業務の質的多様性が高いと言えます。
- 医療OT:個別リハ7〜8時間+記録1時間。患者回転が早い
- 介護OT:個別リハ4〜5時間+集団・記録・連携3〜4時間。長期視点
- 医療OT:診療報酬の単位数管理がシビア
- 介護OT:介護報酬の包括化により単位数管理は緩やか

現場の声・実例
実際に介護分野で働くOTの一日について、施設形態別にリアルな声を紹介します(業務実態調査・口コミサイトより要約)。
ケース1:老健勤務・経験5年OT(30代女性)
「朝は8時20分に出勤して情報収集、8時半から申し送り。9時から個別リハを4件こなし、その後ベッドサイドでADL訓練を2件。お昼は食堂で食事観察を兼ねて休憩。午後は集団体操の進行役、その後個別リハ3件、退所前訪問が週1回入ります。記録は16時半から1時間で集中して終わらせます。残業は月15時間程度で、医療時代の月40時間に比べると本当に楽になりました」
ケース2:デイサービス勤務・経験3年OT(20代男性)
「8時半に出勤して送迎車に同乗(運転免許必須)、9時半に利用者全員到着。バイタルチェック後、10時から個別リハ2件と並行して入浴介助補助。昼食後は午後のレク準備、13時半からレク本番(手工芸を担当)、15時から個別リハ3件、16時から送迎、17時に戻って記録。送迎とレク企画が想像より大変ですが、利用者との距離が近く楽しいです」
ケース3:特養勤務・機能訓練指導員OT(40代女性)
「特養では機能訓練指導員という立場で、1日5〜8単位の個別機能訓練が中心。午前は集団体操とポジショニング指導(介護職員への助言)、午後は個別訓練と環境調整。看取り期の方への関わりも多く、医療時代とは違うやりがいを感じます。残業はほぼゼロ、子育てと両立しやすいのが魅力です」
共通して語られる「介護OTのメリット・デメリット」
- メリット:日勤固定で生活リズムが整う/長期的に利用者と関われる/レクや家屋調査でOTの専門性が活きる
- メリット:単位数ノルマが緩く精神的に余裕/介護職員からの信頼が厚い
- デメリット:医療的な急性期スキルが伸びにくい/給与は医療分野よりやや低め(年収で20〜50万円差)
- デメリット:レク企画が苦手だと負担に感じる/介護職員との人間関係構築に時間がかかる
- 残業時間は医療分野の半分以下になるケースが多い
- レク・送迎・介護助手業務が想定外負担になりうる
- 長期的な生活支援に魅力を感じるOTが多数派
アクション・次の一歩
介護分野OTの一日の流れを理解したら、次は「自分に合う施設」を選ぶ段階です。情報収集から転職活動、スキルアップまで、具体的なアクションを整理しました。
本記事のデータ・比較表で この記事のテーマ の輪郭を把握する。
勤務地・経験年数・希望年収を整理し、当てはまる選択肢を絞り込む。
介護専門の転職エージェントなど、現場情報を持つ専門家に相談すれば判断精度が上がる。
1. 施設見学・職場体験で実際の一日を確認する
求人票だけでは分からない「実際のスケジュール」「残業実態」「レク頻度」は、見学で必ず確認しましょう。チェックすべきポイントは以下の通りです。
- 始業前の準備時間がどの程度あるか(早出が常態化していないか)
- 個別リハと集団活動の割合・時間配分
- 記録時間が業務時間内に確保されているか
- カンファレンスの頻度と参加者構成
- OTが何名在籍し、休暇取得時のフォロー体制があるか
2. 介護分野特化の転職エージェントを活用する
介護分野OTの求人は、医療系より施設規模が小さく非公開求人が多いのが特徴です。リハ職特化型の転職エージェント(PTOTSTワーカー、マイナビコメディカル、レバウェルリハビリ等)に登録すると、内部情報や残業実態を含めた条件交渉がしやすくなります。
3. 介護分野で活きるスキル・資格を磨く
介護OTとしてキャリアを伸ばすには、以下の資格・スキルが武器になります。
- 認定作業療法士(日本作業療法士協会)
- 認知症ケア専門士
- 福祉住環境コーディネーター2級以上
- 介護支援専門員(ケアマネ)
- サービス提供責任者・生活相談員資格
4. 家族として利用先を選ぶ場合の視点
家族のリハビリ先を選ぶ立場の方は、「OTが常勤で何名在籍しているか」「個別リハが週何回受けられるか」「家屋調査・退所前訪問を実施しているか」を必ず確認してください。これらは事業所の運営規程や重要事項説明書に明記されています。
よくある質問
Q. 作業療法士(介護)は夜勤がありますか?
A. 基本的にありません。介護分野のOTはほぼすべて日勤固定(8:30〜17:30が標準)で、夜勤・オンコール・宿直も発生しないのが一般的です。これは医療分野(急性期病院など)の一部OTに比べて大きなメリットで、子育て世代や生活リズムを安定させたい方に向いています。ただし、年末年始やゴールデンウィークなど施設の運営状況によっては交代制で土日出勤が発生するケースがあります。
Q. 1日の個別リハ単位数のノルマはありますか?
A. 施設形態によります。老健は1日18〜20単位(1単位=20分)が目安、デイケアは10〜15単位、特養(機能訓練指導員)は5〜10単位程度が一般的です。医療分野の21単位ノルマに比べると緩やかですが、施設収益の関係で「最低15単位/日」のような内部目標を設けている事業所もあります。求人面接時に必ず確認しましょう。
Q. レクリエーションの企画が苦手でも介護分野で働けますか?
A. 働けますが、デイサービスや小規模多機能型では負担に感じる可能性があります。レクの比重が低いのは「老健の個別リハ中心病棟」「訪問リハ」「特養の機能訓練指導員」などです。レクが苦手な方は、これらの施設形態を選ぶか、レクが得意な介護職員と分業できる体制が整った職場を探すと良いでしょう。
Q. 記録業務にはどのくらい時間がかかりますか?
A. 1日あたり1.5〜2時間が目安です。リハビリテーション総合実施計画書(3か月毎)、日々のSOAP記録、カンファ議事録、家屋調査報告書など書類は多岐にわたります。電子カルテを導入している施設では大幅に時間短縮できますが、紙記録の小規模事業所では2時間以上かかるケースもあります。
Q. 介護分野OTから医療分野に戻ることはできますか?
A. 可能です。ただし急性期や回復期では「最新の評価バッテリー」「リスク管理」「単位数管理」のスキルが求められるため、ブランクが3年以上になると慣れに時間がかかります。介護分野で働きながら、勉強会参加・症例発表・認定資格取得を継続しておくと、医療分野への復帰がスムーズです。
Q. デイサービスで送迎は必須ですか?運転が苦手でも大丈夫?
A. 多くのデイサービスでは送迎業務が含まれます。普通自動車免許(AT限定可)必須の求人が大半で、ハイエース等の乗用車運転が求められます。運転が苦手な方は「送迎業務なし」「送迎は専属ドライバーが担当」と明記された求人を選ぶか、老健・特養・訪問リハなど送迎のない職場を検討しましょう。
Q. 一日の流れの中で最もきついと感じる時間帯はいつですか?
A. 現場の声で多いのは「夕方の記録時間」と「集団レク中の安全管理」です。記録は1日の介入を思い出しながら入力するため疲労が蓄積しがちで、レク中は10〜20名の利用者を1〜2名のスタッフで見守るため転倒リスク管理に神経を使います。タイマーで集中時間を区切る、記録テンプレートを整備するなどの工夫で負担軽減が可能です。
Q. 介護分野OTの平均年収と一日の労働時間のバランスはどうですか?
A. 平均年収は400〜450万円程度(経験5年・常勤)で、医療分野より20〜50万円低めです。ただし残業が月10時間前後と少なく、夜勤手当がない代わりに時間外労働も少ないため、時給換算では医療分野と大差ないか上回るケースもあります。ワークライフバランスを重視する方には十分魅力的な水準です。
