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この記事の結論
- 老健で「辞めたい」と感じる原因の多くは、在宅復帰率・3カ月ごとの判定サイクル・多職種連携という老健固有の構造から生まれています。
- 退職届を出す前に、夜勤回数の交渉・別ユニットへの異動・職種転換・有給や休職の活用を試す価値があります。施設内の異動だけで解決する例も少なくありません。
- 看取りに関わりたいなら特養、医療行為の負荷を下げたいなら有料やデイと、施設タイプを変えるだけで悩みが解消することもあります。辞めるなら次を決めてからが鉄則です。
「介護老人保健施設(老健)で働いているけれど、もう辞めたい」――そう感じているのは、あなただけではありません。在宅復帰を目的とする老健は、特養や有料老人ホームとは異なる独特のプレッシャーがあり、リハビリ職・看護師・介護職・ケアマネが密に絡む現場ゆえの人間関係の難しさも抱えています。ここでは、老健で「辞めたい」と感じる理由を施設特性から分解し、退職前に試せる対処法、別施設で同じ悩みが解決するケース、経験者の乗り越え方までを実例ベースで整理します。読み終えるころには、「辞める」「残る」「動く」のどれが自分にとって正解かを判断する材料がそろっているはずです。
- 老健で「辞めたい」と感じる原因の多くは、在宅復帰率・3カ月ルール・多職種連携という老健固有の構造に起因する
- 退職前に「配置転換」「夜勤回数の交渉」「ユニット異動」で解決するケースも多い
- 看取り中心にしたいなら特養、生活支援にじっくり関わりたいなら有料、医療色を強めたいなら療養型と、施設タイプの移動で悩みが解消する人は約4割
介護老人保健施設が「辞めたい」と感じられる本当の理由
老健は、特養(終の棲家)でも有料老人ホーム(生活の場)でもなく、「在宅復帰のための中間施設」として法律で位置づけられています。この施設特性こそが、他では味わわない独特の疲弊を生む元凶です。ここでは、老健経験者の退職理由として頻出する6つを、施設構造に紐づけて整理します。
理由1:在宅復帰率に追われ、利用者を「回す」プレッシャーがある
老健は介護報酬上、在宅復帰率(直近6カ月の退所者のうち在宅へ戻った割合)によって「超強化型」「強化型」「基本型」「その他型」に分類され、報酬単価が大きく変わります。超強化型は在宅復帰率50%超が要件で、施設経営上ここを死守する圧力が現場に降りてきます。
その結果、「家族が望んでいないのに退所調整を迫られる」「リハビリの成果が出ていない利用者でも在宅復帰計画を立てざるを得ない」という葛藤が生まれます。とくに介護福祉士・支援相談員・ケアマネジャーは、家族との板挟みになりやすく、「自分のやりたいケアと逆方向の業務をしている」感覚が積み重なって燃え尽きにつながります。
理由2:3カ月ごとの判定会議と入退所サイクルの速さ
老健は原則3カ月ごとに入所継続・在宅復帰・他施設移行のいずれかを判定する仕組みです。利用者との関係を築いた頃にはもう退所、また新しい利用者を受け入れて一からアセスメント――というサイクルが延々と続きます。
特養のように「最期まで寄り添う」やりがいや、有料老人ホームのような「生活全体を支える」連続性が得にくく、「流れ作業のように感じてしまう」という声は介護職員の退職理由の上位に入ります。受け入れ・退所書類のオペレーションも膨大で、記録業務に追われて利用者と向き合う時間が削られるストレスも大きい。
理由3:多職種連携の「調整疲れ」
老健の運営主体は医療法人が中心で、医師(常勤義務あり)・看護師・PT/OT/ST・介護職・支援相談員・管理栄養士・ケアマネジャーが同じ屋根の下にいます。このリハビリ・医療・介護の三位一体は老健の強みである一方、職種間の力学がぶつかりやすい構造でもあります。
- リハ職:「機能改善のためにこの動作練習を増やしたい」
- 看護師:「血圧が不安定だから今日は安静で」
- 介護職:「人手が足りず、立位訓練に付き添えない」
- 相談員:「家族はもう退所させたいと言っている」
この調整役を担うケアマネ・リーダー職は会議と記録に追われ、現場介護職は「結局、誰の指示を優先すればいいのか」と疲弊します。特養や有料に比べてカンファレンスの頻度が高いことも、忙しさを倍増させる要素です。
理由4:夜勤の医療対応負荷が想像以上に重い
老健の利用者は要介護3〜4が中心で、医療依存度が比較的高い人も多く入所しています。胃ろう・喀痰吸引・インスリン管理・点滴管理・酸素投与など、特養より医療行為の頻度が高い傾向にあります。
夜勤帯は看護師1名+介護職2〜3名で50〜100床を見るのが標準的な配置で、急変時の判断・オンコール医師への連絡・救急搬送の付き添いなど、責任の重さは想像以上です。「夜勤明けの疲労が抜けない」「医療行為の対応で精神的に持たない」という理由で介護職・看護師ともに離職するケースが目立ちます。
理由5:給与水準が「医療法人系」のわりに伸びにくい
厚生労働省「介護従事者処遇状況等調査」によれば、介護職員(常勤)の平均月給は施設タイプ別で以下のような傾向があります(処遇改善加算込み・各種手当含む概算)。
| 施設タイプ | 常勤介護職の平均月給目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム | 約32〜34万円 | 夜勤手当・処遇改善加算厚め |
| 介護老人保健施設 | 約31〜33万円 | 医療法人系で賞与は安定するが昇給は緩やか |
| 介護付き有料老人ホーム | 約29〜32万円 | 事業者間の差が大きい |
| デイサービス | 約26〜28万円 | 夜勤なしで額面は低め |
| グループホーム | 約27〜29万円 | 少人数ケアで身体負荷は軽め |
老健は基本給がそこそこ安定する反面、特養のように夜勤回数を増やして稼ぐ余地が少なく(夜勤手当の単価が特養より低い施設も多い)、「忙しさのわりに伸びない」と感じやすいのが現実です。
理由6:家族対応・退所調整の精神的負担
「3カ月で在宅に戻すことになっています」「家族さんで受け入れ準備を」と切り出す役割は、支援相談員やケアマネの宿命です。家族からの「うちでは見られない、ずっと置いてほしい」という訴えと、施設の在宅復帰率方針の間で板挟みになり、メンタルを壊す相談員は珍しくありません。看取り対応も増えてきている老健では、「中間施設なのに最期まで看ることになり、覚悟が追いつかない」というケースもあります。
- 老健の「辞めたい」は、在宅復帰率・3カ月ルール・多職種連携という構造起因のものが多い
- 給与は安定するが伸びしろは特養より小さい傾向
- 支援相談員・ケアマネは家族対応で消耗しやすいポジション
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すぐできる対処法
「辞めたい」と思ったら、退職届を出す前にできることがあります。老健は職種・部署が多く、施設内の異動だけで悩みが解決するケースも珍しくありません。ここでは、退職前に試したい7つのアクションを紹介します。
この記事「この記事のテーマと感じる本当の理由」で自分のケースに該当する要因をチェック。
シフト調整・上司面談・休暇活用など、転職前に試せる行動を一つ選んで実行。
1ヶ月試して変わらないなら、施設タイプを変える/転職する選択肢を真剣に検討。
対処法1:シフト・夜勤回数の交渉
夜勤の負担が原因の場合、まず月の夜勤回数を相談しましょう。老健の常勤介護職の標準は月4〜5回ですが、体調や家庭事情を理由に月3回まで減らせる施設もあります。看護師なら「日勤のみ」「夜勤専従」への変更で給与構造ごと変えられる場合も。
- 「夜勤を減らしたい」→ 日勤常勤へ切り替え(給与は数万円下がるが心身は楽に)
- 「夜勤で稼ぎたい」→ 夜勤専従パートへ。1回2.5万〜3万円×月8〜10回で月収25〜30万円台も可
- 「人間関係が辛い」→ 別フロア・別ユニットへの異動を申請
対処法2:職種転換・キャリアチェンジ
老健の強みは、職種の幅が広いことです。介護福祉士から支援相談員・ケアマネ・機能訓練補助・福祉用具担当へとキャリアを変える道が施設内にあります。法人内に特養・デイ・訪問リハがあれば、そちらへの異動希望を出すのも有効です。
対処法3:上司・人事への正式な相談
「辞めたい」と思ったとき、いきなり退職を切り出すのではなく、まずは介護主任・看護主任・事務長・施設長へ「現状の困りごと」を文書で伝えるのが効果的です。とくに以下の3点を書面で示すと、配置転換や業務軽減に動いてもらいやすくなります。
- 具体的な負荷(夜勤回数・残業時間・受け持ち人数)
- その結果起きている健康被害(睡眠障害・体重減少・通院など)
- 希望する改善案(配置転換・夜勤減・休職)
対処法4:有給休暇・休職制度の活用
慢性的な疲労がたまっているなら、まず1〜2週間まとめて有給を取りましょう。労働基準法上、有給休暇の取得は労働者の権利で、施設側は時季変更権を行使できる場合のみ調整を求められます。心身の不調が深い場合は、心療内科の診断書を取って傷病休職を申請する選択肢もあります。社会保険の傷病手当金は給与の約2/3が最長1年6カ月支給されるため、収入が完全に途絶えるわけではありません。
対処法5:副業・資格取得で「逃げ道」を作る
「逃げ道がない」と感じることが、辞めたい気持ちを増幅させます。実務者研修・介護福祉士・ケアマネ・福祉住環境コーディネーターなどの資格取得を進めておけば、いつでも転職できる安心感が得られ、結果的に「今の職場でもう少し頑張ってみよう」と思える余裕につながります。
対処法6:ハラスメントは公的窓口へ
上司や同僚からのハラスメント、利用者・家族からのカスハラ(介護現場では身体的・性的・精神的暴力が頻発)が原因なら、施設内の相談で解決しないケースも多い。以下の窓口を活用しましょう。
- 都道府県労働局・労働基準監督署(パワハラ・残業未払い)
- 地域包括支援センター・介護労働安定センター(業界特有の相談)
- 各都道府県の介護現場ハラスメント相談窓口(厚労省マニュアルあり)
対処法7:退職を決めるなら「次を決めてから」が鉄則
老健は介護職員の人手不足で慢性的に求人がありますが、勢いで辞めて貯金を切り崩しながら転職活動をすると、焦って条件の悪い職場に流れがちです。在職中に転職エージェントへ登録し、最低3社の内定を比較してから退職を切り出すのが安全です。
- 老健は職種・部署が多いため施設内異動だけで解決するケースも多い
- 傷病手当金で収入を確保しつつ休職する選択肢を忘れない
- 退職するなら必ず「次を決めてから」
同じ悩みを別施設で解決できるケース
「老健の構造そのものが合わない」と感じるなら、施設タイプを変えるだけで同じ介護職でも働き方が一変することがあります。悩み別に、移動先の候補と相性を整理しました。
| 老健での悩み | 相性のよい移行先 | 理由 |
|---|---|---|
| 3カ月で利用者が変わるのが辛い | 特別養護老人ホーム | 終の棲家として長期的に関われる。看取りも経験できる |
| 医療行為の負荷が重い | 有料老人ホーム(住宅型)・デイサービス | 医療色が薄く、生活支援中心 |
| 多職種会議が多すぎる | グループホーム・小規模多機能 | 少人数ケアで意思決定が早い |
| 夜勤がきつい | デイサービス・訪問介護・訪問入浴 | 夜勤なし。日勤のみで生活リズムが整う |
| リハビリにもっと時間をかけたい | 介護医療院・回復期リハ病棟 | 医療色を強めつつリハビリ中心の関わりが可能 |
| 給与を上げたい | 有料老人ホーム(高単価ホーム)・夜勤専従 | 都市部の高級ホームや夜勤専従で月収アップ |
厚生労働省「介護労働実態調査」によれば、介護職の離職者のうち約4割は同業界内で別施設へ転職しており、そのうち半数以上が「施設タイプを変えたら悩みが解決した」と回答しています。「介護そのものが嫌い」になる前に、施設タイプを変える選択肢を持っておくことが大切です。
特養に移るときの注意点
看取りに本格的に関わるため、ターミナルケアの研修が役立ちます。一方で要介護度が老健より高く(平均要介護度3.9前後)、身体介助の負荷は増える傾向。夜勤の医療対応は老健より軽い施設が多いです。
有料老人ホームに移るときの注意点
事業者・施設による格差が非常に大きく、給与・人員配置・教育体制を入念に確認する必要があります。介護付き有料は3:1配置基準があり老健と近い体制ですが、住宅型有料は外部サービス利用型で職員の役割が異なります。

次のキャリアの考え方
老健で「辞めたい」と感じた経験は、介護業界全体を俯瞰する貴重な視点を与えてくれます。中間施設として医療と介護の両方を経験した強みは、どの介護現場でも武器になります。次のキャリアを考えるときは、以下の3軸で整理してみてください。
- 関わりの深さ軸:短期的に多くの利用者と関わるか(老健・短期入所)、長期的に少数と関わるか(特養・グループホーム・在宅)
- 医療色の濃淡軸:医療依存度の高い利用者を見たいか(介護医療院・療養型)、生活支援中心がよいか(有料・デイ)
- 働き方軸:夜勤あり高収入か、夜勤なし生活リズム重視か、訪問系で1対1のケアか
また、「介護を続けるかどうか自体を見直したい」場合は、介護で培ったスキルを活かせる隣接領域もあります。福祉用具専門相談員・地域包括支援センター職員・介護タクシー・介護美容師・介護事務など、現場から少し距離を置いて業界に関わる道もあるのです。資格を取り直すなら、社会福祉士・精神保健福祉士・公認心理師など、相談援助系の国家資格が老健経験との親和性が高いでしょう。
- 老健経験は医療と介護の両方を見られる稀有なキャリア資産
- 関わりの深さ・医療色・働き方の3軸で次の現場を選ぶ
- 介護を離れる場合も、相談援助・福祉用具・介護事務など隣接領域に道がある
よくある質問
データで見る介護老人保健施設の離職・悩みの実態
「きつい」「辞めたい」という気持ちは、あなただけの感覚ではありません。介護労働安定センターの調査では、働くうえでの悩みとして「人手が足りない」が49.9%、「仕事内容のわりに賃金が低い」が37.5%、「身体的負担が大きい」が29.3%と上位に並び、事業所の64.7%が人員の「不足」を感じています。悩みは気のせいではなく、数字にもはっきり表れているのです。一方で、職場への定着に効果があった要因の1位は「職場の人間関係がよいこと」で62.7%でした。裏を返せば、環境しだいで負担が和らぐ余地は大きいということ。今の職場が合わないと感じるなら、まずは他施設との比較や相談で選択肢を確かめてみてください。
出典: 介護労働安定センター「令和5年度 介護労働実態調査」
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